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コラム・おたより

法人経営・施設運営の視点

2016年度 経営の視点

何を、社会福祉法人へ期待し、どのように生まれ変わるのか。

理事長  山﨑 忠顯

かつて全国の新聞紙上において一部の社会福祉法人がひどく叩かれました。それは理事長の立場を悪用して社会的な不祥事を引き起こしたことに原因があります。全国で何人かの理事長が引き起こした社会的な問題を社会は容認しない。しかも日本経済新聞に社会福祉法人は財務に余裕があり、この余裕金をわが国の逼迫している財政の穴埋めに当てられないか、という声にまでなって聞こえてきました。これでは社会福祉法人の日ごろから実践している児童・高齢・障害・発達・救護・母子・生保などの社会福祉多方面に関する、諸事業が否定されかねない、大変な問題であります。税金の対象にして課税の枠に入れようとしている、約20,000ある社会福祉法人にとって大問題である。

昭和26年戦後間もなく寄付文化を中軸とするGHQの指導の下に誕生した法律は、キリスト教を母体とするアメリカの精神性が背後にあります。民間福祉事業等への公金の支出禁止を踏まえ生まれた社会福祉法人の制度は、民間福祉事業の安定化と拡大に大きく寄与したが、反面、公の管理化におかれることとなり、民間福祉事業の独自性が失われたとも言われる。このような経緯のある社会福祉法人が、結果として、法人の現況に立って、今後どのように生まれ変わるのか、という基本的な問題を再構築する運びとなり今国会に上程された訳です。かつて長い間継続された措置費時代に運営費は全て使いきらなければならず、年度末に0円に近いほど良い運営がされたと見なされた時代がありました。今考えると不思議な時代です。しかし徐々にではありますが時代の変化は、間違いなく社会福祉に良い方向に進んでいるとは思います。

ただし先に述べたような不祥事問を引き起こす余地がいまだ残っていることや、社会福祉の実践や理念に関することで、あまりにも社会福祉法人経営者の感覚のズレが問題です。

そこでわたし達、社会福祉法人は自らの襟を正すことや、そのための在るべき姿の証明をしなければなりません。少し難しくなりますが、いままで多くの社会福祉法人はあれをしている、これもしているといった自己の宣伝が苦手で、そのようなことは当たり前のこととして法人内の事業として収めてきました。言葉を代えますとこれからは、地域社会のなかで社会福祉法人としてふさわしい多様な事業や、困りごと相談のような枠を広げた事業にしていくことや、第三者から見ても納得が得られるように財務規律の公開を、積極的にホームページ等用いてすることがあげられます。

人材の確保は今やどの法人にとっても大きな課題です。人口減、少子高齢化、福祉離れの社会状況にあって、よほど大胆ともいうべき法人の改革が望まれます。その基本的なことに

閉ざされた事業から、開かれた事業への進化が望まれます。

2016年度 運営の視点

『同じ』と『違う』

~日々のホウレンソウ(報告・連絡・相談)が社会を変える視点~

総合施設長 阪口 光男

今日、世界的な傾向として、障がいのある人を社会的に分離することは社会連帯と社会協同のモラルに反するという考え方が主流になり、社会の中で労働の担い手としても参加してもらえるような環境整備をするというインクルーシブな社会の実現を目指すことで社会全体も発展すると叫ばれるようになりました。社会全体で全ての人が人権という『同じ』を共有し、それぞれの多様性・個別性という『違う』を受容し、共同体化していることを意識しはじめたともいえるのです。

私たちの肢体(からだ)は、筋肉・骨・脳・神経・血液・循環器系・呼吸器系・消化器系腎尿路系・内分泌系・感覚器系・生殖器系等、実に複雑です。その仕組は、生命を維持するという意味では同じ役割をもっていると共に、又、異なる役割をもっているが故に共通の目的を達成することが出来るともいえます。それらは相互に係わり、それぞれが支えあっています。どれ一つとっても軽んじられるものはありません。『奇跡のリンゴの実』(無農薬)をならせる土の中には900という微生物があるといわれています。リンゴの栽培は農薬を使用しなければ無理とされていました。自然界にある一つひとつのものは異なるものが、それぞれが支えあい,かかわり合って全体の調和を保っています。この調和を実現することで、無理とされた無農薬リンゴを生み出すことに繋がったのです。私たちの社会は、ともすると異なるものを同じになるよう強要したり、異なるものを排除しようとする傾向があります。しかし、違いを違いと認め合い、相互に受け入れ、学びあうことでこそ、各々の成長を促し全体が豊かになることに気づかなければなりません。新しい文化を生み出す(アカルチュレーション)ためには、多様性と異質性を認め合い受け入れ合うことから始めなければならないのです。

組織を活性化するためには報告・連絡・相談〔ホウレンソウ〕が大事だといわれます。いつ報告し、なにを連絡し、誰に相談する等のことが社員教育等で、具体的に指導を受けます。それでも忘れてしまったり、一方的になってしまったり、不十分な内容であったり中々うまくいかないのも事実です。その根っこには「同じ」と「違う」の理解があるのではないか。組織の共通の目的「同じ」と、人は受けとめ方や感じ方等が「違う」ということをしっかり理解することで重要であり、そのことに互いが気づきあうことで〔ホウレンソウ〕も円滑に機能するのではないでしょうか。「同じ」と「違う」を受け止めることで寛容さが生まれ、配慮が育ち、重荷を引き受けあう姿勢が養われるのです。法人理念は「一人ひとりが安心して共に生活できる福祉コミュニティの創造」です。コミュニティ(重荷を負いあう)でケア(放っておけない)する姿勢が〔ホウレンソウ〕を強めるし、福祉社会を形成することにも繋がると確信しています。飛躍しているように思えるかもしれませんが、私たちの日々の関係のあり方が明日の社会のあり方を変えて行くのです。